低身長症とは

低身長症とは、年齢や性別の平均身長と比べて、身長が著しく低い状態を指します。具体的には、同じ年齢・性別の子ども100人の中で、低い方から2~3番目以内に入る場合(-2SD以下)を一つの目安とします。
低身長は、病気によるものもあれば、体質的なもの、あるいは一時的な成長の遅れであることもあります。大切なのは、なぜ低身長になっているのかを正しく見極めることです。早期に原因を見つけ、適切な治療を行うことで、将来の身長を大きく伸ばせる可能性があります。

低身長症の原因

お子さんが低身長となる原因は、一つではありません。大きく分けて、病気が原因となるものと、そうでないものに分けられます。

病気が原因となる低身長

特定の病気が原因で身長の伸びが悪くなることがあります。主なものとしては、以下のようなケースが挙げられます。

成長ホルモン分泌不全性低身長症

身長の伸びを促す「成長ホルモン」が十分に分泌されないために起こります。

甲状腺機能低下症

成長に必要な甲状腺ホルモンが不足している状態です。

ターナー症候群

女の子に特有の染色体異常で、低身長の他に様々な特徴が見られます。

軟骨異形成症などの骨の病気

骨の形成に異常があるために、身長が伸びにくくなります。

慢性的な病気

心臓病、腎臓病、喘息、食物アレルギーなど、長期間にわたる病気が体の成長を妨げることがあります。

栄養吸収障害

セリアック病など、食べ物から栄養を十分に吸収できない病気も原因となることがあります。

病気ではない低身長(体質性低身長)

病気が原因ではない低身長も多く存在します。これらは「体質性低身長」と呼ばれ、多くの場合、特別な治療を必要としません。

家族性低身長

両親や祖父母など、家族に身長の低い方がいる場合に、遺伝的な要素で低身長になるケースです。

体質性思春期遅発症

身長の伸び始める時期や思春期の発来が周りの子より遅れるタイプです。最終的な身長は平均に追いつくことが多いです。

低身長の症状

低身長の「症状」は、主に「身長が伸びないこと」そのものです。しかし、その背景にある原因によっては、身長の伸び悩み以外にも以下のような兆候が見られることがあります。

成長曲線の停滞や下降 これまで順調に伸びていた身長の伸びが悪くなったり、成長曲線のカーブが平坦になったり、下向きになったりする。
同年齢の子どもと比べて明らかに小さい 学年の中で一番前になることが多い、服や靴のサイズがなかなか大きくならない、といった特徴が見られることがあります。
体重増加不良を伴う 身長だけでなく、体重もなかなか増えづらいことがあります。
顔つきや体つきの特徴 成長ホルモン分泌不全症の場合は、顔つきが幼く見えたり、体が丸みを帯びて見えたりすることがあります。甲状腺機能低下症の場合は、活気がなく、むくみが見られることもあります。
思春期の発来の遅れ 成長ホルモン分泌不全症や体質性思春期遅発の場合、乳房の発達や陰毛の発生など、思春期の徴候が見られるのが遅れることがあります。
学業や運動面への影響 体が小さいことで、学校生活や運動で困ることが出てくる場合もあります。

低身長症の診断と治療方法

診断の流れ

問診と身体測定

これまでの身長・体重の記録、ご家族の身長、出生時の状況、病歴、生活習慣などを詳しくお伺いします。現在の身長・体重を正確に測定し、成長曲線を作成・評価します。

骨年齢の測定

手のレントゲンを撮影し、骨の成熟度を評価します。実際の年齢と骨年齢がどれくらいずれているかを見ることで、今後の身長の伸びしろを予測することができます。

血液検査

成長ホルモン、甲状腺ホルモン、IGF-1(インスリン様成長因子-1)などのホルモンレベルや、その他の病気の有無を調べます。

成長ホルモン分泌刺激試験

成長ホルモンが本当に足りているかを詳しく調べるために、薬剤を投与して成長ホルモンの分泌量を測定する検査です。当院では入院などを行わず日帰りで検査を行うことが可能です。

その他

必要に応じて、頭部MRI検査(脳下垂体の異常の有無確認)、染色体検査(ターナー症候群の診断)などを行うこともあります。 これらの検査結果を総合的に判断し、低身長の原因を特定します。

治療方法

成長ホルモン補充治療

成長ホルモン分泌不全性低身長症の場合に、不足している成長ホルモンを毎日自己注射で補う治療です。効果が期待できる場合が多く、お子さんの最終身長を伸ばすために有効な治療法です。

甲状腺ホルモン補充治療

甲状腺機能低下症が原因の場合、甲状腺ホルモン剤を内服することで身長の伸びが改善します。

基礎疾患の治療

慢性的な病気が原因の場合は、その病気自体の治療を行うことで、身長の伸びが改善することもあります。

経過観察

家族性低身長や体質性思春期遅発など、病気が原因ではない低身長の場合は、多くの場合、特別な治療は行わず、定期的に身長の伸びを観察していきます。

どの治療が適切かは、お子さんの状態によって異なりますので、検査結果などから総合的に判断し、お子さん一人一人にあった治療を行います。

また、お子さんの-2SD以上の低身長は保険がききません。骨端線閉鎖を伴わない家族性低身長SGAは、小児慢性特定疾病医療費助成制度の適応ではなく、保険治療となり、自己負担は2~3割になります。しかしながら、高額医療制度や自治体の医療費助成制度を利用することが可能です。具体的な詳細については受診時にお尋ねください。
その他、保険治療、小児慢性特定疾病医療費助成制度が適応とならなかった場合、自費治療も可能です。ご希望の場合はご相談ください。

ご自宅で気をつけること

バランスの取れた食事

骨や筋肉を作るたんぱく質、骨の成長に必要なカルシウムやビタミンDなど、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。好き嫌いが多い場合は、工夫して色々な食材を摂らせるようにしましょう。

十分な睡眠

成長ホルモンは、特に深い眠りの時に多く分泌されます。お子さんが質の良い睡眠を十分にとれるよう、規則正しい生活リズムを整え、寝る前はスマートフォンやテレビなどの刺激を避けましょう。

適度な運動

運動は骨に刺激を与え、成長ホルモンの分泌を促す効果があります。外で遊ぶ時間を作ったり、適度な運動を習慣づけたりすることは、心身の健康にもつながります。

ストレスの軽減

過度なストレスは、お子さんの心身に様々な影響を及ぼし、成長を妨げる可能性も指摘されています。お子さんがストレスなく、のびのびと過ごせる環境を整えることも大切です。

成長曲線を定期的にチェック

母子手帳などを活用し、お子さんの身長を定期的に測定し、成長曲線に記入する習慣をつけましょう。これにより、わずかな変化にも気づきやすくなります。

お子さんの気持ちに寄り添う

「小さいこと」を気にしているお子さんもいます。ネガティブな言葉をかけず、お子さんの気持ちに寄り添い、ありのままを受け入れる姿勢が大切です。

まとめ

成人身長と一番相関関係のある因子は思春期開始時の身長です。思春期開始時の身長が高ければ成人身長も高くなり、反対に思春期開始時の身長が低ければ成人身長も低くなります。そのため、思春期に入るまでに身長を高くしておくことが重要です。

  • 同年代のお子さんよりも明らかに小さい
  • 最近、急激に身長の伸びが悪くなった

などがありましたら一度ご相談ください。